霧島さん
第3章 霧島さんと志月蛍
ぱち。
目が覚めると、朝の柔らかい光が目に飛び込んできた。
窓の外からは雀の楽しそうな鳴き声。そしてパタパタと登校している子供達の足音と。
「…何してるんですか」
「いや、寝顔が天使だなと思いまして」
ピピッと、すぐ目の前で鳴るカメラの音。
「志月さん消してください」
「無理です嫌です」
ーーーそんな行動をとるのは言わずもがな志月蛍である。そしてこれは何度言っても無駄だと悟った。
「……」
「…?どうかしましたか?」
というか、割と早い時間帯なのにパリッとしたワイシャツにネクタイをしっかりとしめ、
いつもは無造作な黒髪がワックスで整えられているそのキラキラ度マックスな格好はなんだろうか。
それに2時間前まで抱き合ってたはずなのに、この爽やかさはどこから来ているんだ…。
「服…」
「え?あぁ。そりゃ、俺も社会人なので。仕事です
よ」
「仕事…」
そうか、納得した。若く見えるのに妙に喋りが落ち着いているのは、社会人だったからか…。
「それより…。何か怖い夢でも見ましたか?」
「え?」
と、静かになった私を志月蛍が心配そうな面持ちで聞いてきた。