霧島さん
第3章 霧島さんと志月蛍
怖い…夢?
「いえ。いい夢なら見ましたけど…」
と、少し考えてそう言った私の言葉に、志月蛍は僅かに目を見開かせた。
その微妙な反応に私も少し驚く。
「もしかして、私何か言ってましたか?」
なんだか気になってそう問いかけると、志月蛍はいつも通りの柔らかい笑みを貼り付けて首を振った。
「いえ。元気がない様子だったので気になっただけです。気にしないでください」
「…そうですか」
それは昨日貴方が夜から朝にかけてじっくり5回も致すからでは?と内心思う。
けれどあえて口にせず、私は小さく頷いた。
「もう出なくてはいけないので行きますけど、朝ご飯と昼ご飯はここに置いておくので食べてくださいね」
と、美味しそうな料理が乗った台をベッドのすぐ側に置かれ、不思議に思う。
「ありがとうございます。…でも、机そこにありますよね?」
「ん?」
上着を羽織る志月蛍の背中に言葉を投げかけると、志月蛍もキョトン、とした顔でこちらに振り向いた。
だって、テレビの前には物が全く置かれていないきれいな机がちゃんとあったはずだ。
それを使えばーーーー…、
「ってなんですそのニヤニヤ顏」
「いや、気づいてないんだなーと思いまして」
「?」
志月蛍の思っていることは相変わらずわからなくて首をかしげる。
なんだかわからないことをニヤニヤニヤニヤされるととんでもなく腹立つな。