霧島さん
第4章 志月さんの秘密
目が覚めると、志月蛍は隣にいなかった。
恐らく仕事に行ったのだろう。
昨日と同様、ベッドの脇に置かれてある台には美味しそうなサンドイッチが準備されている。
「今日は5時過ぎまで抱き合ってたのに…」
本当に、体力も性欲も恐ろしいほどある男だなと思う。
「…ッやっぱり私は動けないし…」
はあ、と深いため息を吐いて、起き上がらせようとした体を再びベッドに沈める。
ーー…昨日は時間がなかった分、初めて抱き合った時よりも激しかった気がする。
疲れ果てて逃げようとした私の腰を、あの意外と筋肉質な腕で引き寄せキスで思考を奪い、
よがる私の反応を散々楽しんでいた志月蛍を思い出す。
『霧島さん、可愛い』
「〜〜〜ッ」
って、なんでそこを思い出す私…!!
なんだか自分がいやらしくなっているみたいで恥ずかしい…!
パタパタと熱くなった顔を手で煽り、昨日の志月蛍を消し去る。
そして、気を紛らわそうとサンドイッチに手を伸ばしたその瞬間、
「おはよ~ございます」
「!?」
突然聞こえてきた声に、私は掴んでいたサンドイッチを思わず落としてしまった。
慌てて部屋を見渡すと、マグカップを片手にソファーに座っている志月蛍の姿が。
「えっなんでっ」
「ふはっそんな驚くことですか?」
固まる私を見て可笑しそうに笑った志月蛍は、黒髪を自然に流していて、朝だというのに相変わらず爽やかな佇まいだ。