霧島さん
第4章 志月さんの秘密
「し、仕事に行ったんじゃ!」
「まあ、俺も仕事に行くつもりだったんですけど、上司から有給を消化できるときに消化しろと言われてしまいまして」
「有給…、」
「はい。なので今日は一日中霧島さんと過ごせますよ」
「、」
以前の私なら、結構だと言い切っていただろう。
けど、一日中誰かと一緒にいるなんて滅多にないから、少しだけ心を弾ませている自分がいる。
――それに、今日ずっとこの人といられるのなら…、
「あの…。志月さんのお仕事は、あまり休みがとれないんですか?」
「そうですね。休日も呼び出されることは結構あります」
「じゃ、じゃあ…、外…。一緒に出てみませんか…?」
思い切ってそう言うと、ぴたりと動きを止めた志月さんが驚いたように目を見開かせた。
けど、すぐに笑みを戻した彼がソファーから身をのりだして距離を縮める。
「霧島さん、それはデートのお誘いですか?」
「違います」
「ふはっ一刀両断。でも、霧島さんのお誘いなら是非」
咄嗟に可愛げのない返事をしてしまったけれど、志月蛍は見透かしたように微笑むだけで。
私はそんな彼に救われながら、彼と出かけられることに心を躍らせていた。