テキストサイズ

霧島さん

第4章 志月さんの秘密



え!誰!!?



慌てて水を飲み込み、志月蛍が座るはずのその席にドンと座っている若い男を凝視する。



フワフワとした茶色い髪と、少し幼い顔立ちをムスッとさせたその男は、忌々しそうに志月蛍が出て行ったドアを睨んでいた。



「なーんて!アイツはただ外面のいい計算高い男だけどな!」



しかし、すぐに顔を綻ばせて笑った彼の顔はとても無邪気で、直感的に彼と仲がいいのだと悟った。



けど私はそれどころではない。



誰とも分からない男が目の前に座っているのだ。



好奇の目を明らかに向けられているこの状況に、冷や汗が背中を伝う。


「ね、あんた蛍の彼女?」


「ちっ…ちがいます…」



貴方こそ誰なんですか。と言いたいけど、暴れる心臓が口から出そうで何も言えない。



「なんだ、からかってやろうと思ってついてきたのに。まあ、そんなこったろうと思ったけど」


「……」



コロコロコロ、と持っていたペンを机に転がし出したその男は、つまらなさそうにそう言う。



まるで震えて顔を合わせようとしない私をなんとも思っていようだ。



「でも、あんたは違うでしょ?」


「え、」



「好きでしょ?蛍のこと」



ーーーー…なんなんだ、この男は。興味を遠慮なくぶつけてきたと思ったらすぐに失せ。またぶつけてくる。



なんかこの掴めない感じ、誰かに似ているような…。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ