
霧島さん
第4章 志月さんの秘密
「…え?」
そして、再び時を動かしたのは志月蛍だった。
メニューを持っていない反対の手で、自然と溢れた言葉に驚いたように口元を覆う。
「………、」
そして私も、自分が吐き出した言葉が信じられなかった。
違う。そんな困った顔をさせるつもりじゃなかったの。
自分が紡いだ言葉だって飲み込めていないのに、何を言ってしまったんだろう。
「あ、あの。ご、ごめんなさい。今のは冗談なので忘れてください」
混乱した状態のままコップを手に取る。
だけど、指先まで手が震えてしまってうまく掴めることができない。
駄目だ、平静を装わなきゃ変に思われる。…いや、もうとっくに思われてる…?
どうしたらいいの。こんな時、どうすればーーー…、
「霧島さん」
「っはい!?」
と、震える私の手の上に大きな手が重なって、心臓と肩が飛び跳ねる。
そのことで手元しか見れていなかった私は、勢いで顔を上げた。
「すみません、まさか霧島さんからそんな言葉が聞けるなんて思わなくて、固まってしまいました」
「…いや、えっと…」
手…手…!!
震える私の手を治めるかのように優しく指が絡められ、鼓動がさらに速くなる。
「嬉しいです、すごく」
焦点もあっていない気がするけれど、志月蛍の貼り付けたような笑顔がぼんやりと見えている…気がする。
