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霧島さん

第4章 志月さんの秘密



「霧島さん」


「は、はい、」


「今の、本当に冗談なんですか?」


握られた手に優しく力が込められる。



「…、」



私はこの男が恐ろしい。そんな悲しげな声で、顔で、スラスラと頭の中で書かれた台本を読めてしまうのだから。


「霧島さん?」


この人はきっと、知らないんだろうな。


その笑顔も、嬉しいと言ってくれたその言葉も全て作られたものだって私が気付いてること。


私みたいな臆病な人間は、人の心に敏感だから、上手に隠してもわかってしまうのに。


「…嘘、つかないでください」


「え?」



私の消え入りそうな声に、志月蛍がキョトンとこちらを見る。



けれど、我慢しきれなかった涙が零れた瞬間、その顔は驚きに変わった。


自分でもコントロールできないくらい、静かに、ぼろぼろと落ちていく。


「霧島さ…、なんで泣いてるんですか?嘘って?」


心配そうに眉を下げた志月蛍が、優しい手つきで涙を掬ってくれる。


そんな優しさも、今は辛い。


「知ってるんです。分かってたんです、」


本当は、貴方が


「私のこと、一ミリも好きじゃないってこと」


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