霧島さん
第4章 志月さんの秘密
「い、いとしい?」
聞きなれない言葉にぱちぱちと瞬きをして彼を見ると、口元に笑みを浮かべながらもどこか影のある表情に息を飲んだ。
頬に添えられていた熱が離れ、すぅっと冷めていく。
「本当に、霧島さんはどこまでも純粋ですよね」
既に冷めてしまっただろうコーヒーをスプーンでかき混ぜながら、彼がぽつりとこぼす。
そのらしくない雰囲気に、私は今から何を話されるのか察してしまう。
「本当に純粋だから、時々自分のしていることが後ろめたくなる」
「……、」
あ…。
彼は一旦スプーンを置き、小さく息を吐くと私を見据えた。いつもの飄々とした笑顔は見せず、真剣な顔で。
「俺も、もう霧島さんに嘘をつきたくないと思ってたんです」
バクバクと、彼が唇を動かすたびに心臓が激しく暴れる。
覚悟はしているのに、聞くのが少し怖いと思うのは私の心の弱さだ。
「霧島さんの言う通りだよ」
バク、バク、バク、
「俺は霧島さんに嘘をついていた」
バクン、バクン、バクン、
本当は
一度だって