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霧島さん

第4章 志月さんの秘密




「霧島さん、気づいてますか?」


「え…?」


そして最後にぱたっと落ちた涙を掬った志月蛍が、穏やかに笑みを深める。


「俺のことを話しながらそんなに泣くなんて、好きって言われてるみたいじゃないですか」


掬った涙が、志月蛍の綺麗な指から手首へと流れてゆく。


その流れがはっきりと見えたのは、再び頬に手が添えられたからで。



「ん、」


え、と思った時には、私の唇は彼に奪われていた。


……………………嘘、


目を見開いて、目の前にある彼の長い睫毛を見る。


そのキスは唇と唇が合わさるだけのものだったけれど、こんなお店の中でこの男は何をしてくれているのだろう…!?


「っしっ志月さん!!何をしてるんですか!?ここどこだと思って…!!」


慌てて離れ、小声で怒りの抗議をする。


自分の顔が真っ赤に染まっているのを自覚しながら周りを見ると、ウエイターさんに慌てて顔を逸らされてしまった。


…あの反応は絶対見られた。


ボボボッとまた顔の熱があがる。


「みっみられてたじゃないですか!!キスで誤魔化そうとしても駄目なんですからね!?」


ううっと恥ずかしさで唸りつつ睨むも、彼は相変わらず反省の色を見せない。


「だって、愛しいと思ってしまったのだから仕方ないじゃないですか」


それどころか、志月蛍はそんな爆弾発言をさらりと落とすし。

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