霧島さん
第5章 志月筧
ーーーーー…
誰もいない部屋の中で座り込んだまま、ボーっと空中を見つめる。
「静かだなあ…」
こんなに静かなのはいつ振りだろうか。
彼と出会ってから、こんなにひとりぼっちだと感じるのは初めてだ。
「……寂しいな」
志月さんと図書館に行った日から、2日が経った。
その二日間の間、彼は帰ってきていない。
仕事でしばらく帰ってこれないと言っていたけれど、きっと半分嘘だと思う。
そういった彼は一度も私と目を合わすことなく行ってしまったのだから。
聞かされた真実にショックをうけている私に気を遣っているのだろうか。
それとも、後ろめたさ?
「……」
目を閉じれば、彼の姿が鮮明に脳裏に浮かぶ。
あの日の彼の声も、言葉も、はっきりと覚えている。
『俺は、一度だって君を本当の意味で好きだと思ったことはなかった』
でも、それは私だけでなく、誰にでもそうだったのだと。
『今までの子にも、慈愛を持って接していたつもりだった。けど、皆口を揃えてこう言うんです。
私はペットじゃない、と。
俺の与えていた愛は、甘ったるいものなんかじゃなくて、犬や猫に与えるような、ただの優しい愛だったんです』
だから、私を愛おしいと思うのは本当だけど、それは本当の愛じゃないと。
そう、はっきり言っていた。
ーーーーー…でも、そう言われることは覚悟していたから、驚くことはなかった。