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最後の恋

第2章 たべもの


彼と一番よく食べたのは、牛丼だった。

会社帰りに始めた趣味の習い事で彼と出会った。

初めて一緒に行ったのも、教室帰りの牛丼屋だった。

何が食べたい?と聞かれて、通りのはす向かいにあった牛丼屋を指したとき、彼は苦笑したものだった。

帰り道が同じだった私たちは、よく、一緒にその牛丼屋に行った。

サラダとお味噌汁のつくセットをいつも頼んでいた。

向い合わせでなくカウンターだったから、何となく安心して牛丼をかっこむことができた(若い女性にあるまじき姿だったかもしれない)

女の私と同じ量で足りるのかと、私はいつも不思議だった。

あればあるだけ食べるけど、ないならないで構わないんだ、と彼は言っていた。

後日、私たちが仲良さそうだと勘ぐった教室の仲間に探りを入れられた彼は、

たまにご飯食べたりするけど、牛丼ですよ、色気も何もないでしょ、と笑って見せたそうだが、

焼き肉一緒に食べる男女は深い仲だって言うじゃないか、牛丼だって肉なんだから同じだよ、とやりこめられたらしい。

何ともかわいそうだなと思ったものだったが、確かに彼とはその後まもなくして深い仲になったのだから、その都市伝説もあながち間違いではなかったのかもしれない。

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