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Face or Body

第17章 過去と今の交錯

ヒカルは
麻薬密売に関する殺人事件の犯人確保を
海浜署署長から
表彰された。
26歳のいち婦人警察官が
2回目の署長賞を獲得するのは
異例中の異例なことであった。


ヒカルは海浜署の屋上で
ぼんやりと風に吹かれて空を見上げた。

『おう!! 嬢ちゃんは、事件が解決したら、いつもここに来るよな。』

デーブが後ろから缶コーヒーを片手に
話しかけてきた。
この屋上は
デーブの喫煙場所でもある。

タバコに火をつけて
デーブは旨そうに煙を吐く…。

『デーブさん… 私… 』
ヒカルは
そう言ってから言葉を飲み込んだ。

『嬢ちゃん… 山里宏樹…今、釈放されたよ。嬢ちゃんにくれぐれもよろしくって言ってた…。』
『【青山さんは、私と娘にとっては救世主です。素晴らしいお巡りさんです】ってさ
…。』

山里宏樹の
マサなる人物への暴行に関しては
やはり
証拠不十分であり
被害者であるマサ本人が
もう亡くなっていることから
暴行傷害罪も不問となった。

妻である遺体は
依然見つからないがないが
もう投身自殺したことは明白であり
『マッハの密売に打撃を与えれたので、このあたりで現実を受け止めて、娘エリカがいる神戸の実家で、もう一度人生をやり直します。』
と過去に区切りをつけて
前をむいて歩きだしたようだ。

ヒカルは
そのことを聞いてから
再び
『デーブさん… 私…』と
思い詰めた表情で
口を開こうとしたが
うまく伝えきれない。

なぜなら
あのマサに扮した男の
亡くなる寸前の不自然な行動…
あれは
あの男の本質?本能?

瀕死の状態で
あの男は
私の乳首を吸いつつ舌先で
乳首を転がしていた…。
私の尻をまとわりつくように
手で撫でた…。
そして
3年前の私が逮捕したはずの
連続婦女暴行障害事件の犯人と同じように
あのとき
私の乳房にνマークをつけた指先…。

犯人は私が捕まえた。
高城翔…。

もしも!!
あのとき私が誤認してた?
本当の犯人は
あのマサに扮した男?
まさか…
まさか…!!


『あのさ… 俺らも振り返れないんだよなぁ。 …過去は消えないし、戻れない…。 だけどその過去に自分なりの正義に従って動いたんなら… …胸張ったっていいんじゃねえか?』
デーブは
吸い終わったタバコを
灰皿に入れて
ヒカルを包み込むように微笑んだ…。

ヒカルは少しだけ
救われた気がした。

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