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泣かぬ鼠が身を焦がす

第16章 馬に蹴られる


「純、飯食おう。腹減った」
「……うん」


やっぱり拓真さんに言うべき?
って、なんて言うんだよ

茜さんが拓真さんのこと好きだって?

馬鹿か
茜さんの気持ち俺が言う権利なんてない


俺はとにかく内心の動揺を悟られないように


「あんだけピザ食ってまだ入んのかよー」


なんて茶化しながらテーブルに向かった


「育ち盛りなんだよ」
「おじさんの癖に嘆かわしい」


俺の言葉に笑いながら「おい」と文句を言う拓真さん

俺もそれに笑って答えた

けど、心の中はずっと荒れたまんまで

心の中と表情のギャップに、吐き気がした


「これ美味いな」
「そうだね」


拓真さんがちょっとでも茜さんを褒める言葉を口にするとツキン、と胸が痛む

でもそれにはイライラが付き纏った


だって茜さんが悪いわけじゃないし
ご飯にも罪はないし
拓真さんが褒めたことにもそんなに深い意味はないだろうし
そもそも褒めることぐらいあるし

なのに

何て言えばいいのかな
こんなこと考えてる俺だけが悪いやつって言うか

俺だけが、嫌なやつに感じてしまう


「茜さんのご飯はいつも美味しいよ」
「そうだな。純は3食あいつが作ったもの食べてるしな」
「……うん」

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