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泣かぬ鼠が身を焦がす

第28章 画竜点睛


でも、唇に触れそうなほど近くに持ってこられたお粥を拒否するってことが俺には出来なくて


「……っ」


俺は大人しく口を開けた

レンゲを口に入れられると、自分でお粥を口の中に入れる


「熱っ……!!」
「! 悪い。火傷したか?」
「ん……大丈夫……」


口の中に入れたお粥は用意してたのを温め直してくれたものだったらしくて、結構熱々

火傷するほどではなかったけど、結構口の中が熱くなってしまった


でも、これはチャンスだ
この恥ずかしいのから脱出するチャンス!

と思って


「拓真さん、俺ーーー」


自分で食べられるよ


と言おうとしたら


「ん?」


返事をしながら拓真さんは次のお粥をレンゲに掬って息をかけて冷ましている

その息が俺の首筋にちょっと当たるのが擽ったくて、恥ずかしくて


「なんだ?」
「……何でもない」


俺は何も言えなくなってしまった


「ほら、もう一口」


こうなったらヤケだ
さっさと全部食い切ってやる!!


「ん!」


俺は拓真さんに差し出されるレンゲに勢いよく食い付いた


暫くして


「ご馳走様でした」


俺はちゃんと全部お粥を食べきることが出来た

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