
泣かぬ鼠が身を焦がす
第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)
明らかに膝が折れていましたが、そんな嘘を吐くなんて
まさか、私の言い付けを守れなかったから嫌われるとでも思われているのでしょうか
「……」
「え、なん……っふぁ」
私が何となく三村様の首の辺りに手をやって撫でると、三村様は身を縮こませながら擽ったそうにされます
ですが同時に気持ちよくもありそうで、お腹を出している犬が連想されました
「お疲れでしょう。構いませんから、寝ていらして下さい」
今度は笑顔で私がそう告げると、三村様は目を蕩けさせながら
「はい……」
と返事をしました
このまま撫でていてはいけませんね
ずっと側にいたくなってしまいそうです
私が撫でるのをやめて立ち上がろうとすると、三村様の口から名残惜しそうな声が出ました
「!」
「す……すみません」
本人もそのような声が出て驚いているようですが、私も自分の高まっている鼓動に驚いています
そんな顔を
そんな声をされたら
ずっと構ってしまいたくなるじゃないですか
いけない
私は敢えて三村様の誘惑を断ち切って立ち上がり、浴室へ向かいました
空の浴槽にお湯が入っていく様子を眺めながらひたすら何も考えないように努めます
