
泣かぬ鼠が身を焦がす
第33章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー2)
それから上手いこと絆されてくれた伊藤さんを公園に連れ込んで、人目が届かない位置のベンチに誘った
それで押し倒した時の伊藤さんの顔
ほんと、可愛いな
裏切られてショックだった?
そんな絶望に満ちた顔しちゃってさ
「俺に虐められるの、癖になっちゃったんでしょ?」
「!? なってません!!!」
必死で否定しちゃって
かーわいい
すると、俺がシャツを脱がそうとしていた手に伊藤さんの手が添えられた
「抵抗するの? そんなことしたら先に手縛っちゃうよ」
この前みたいに
あーでも、ちょっとMっぽいしその方が嬉しいのかな
とか、呑気に考えていたら「その必要はありません」とハッキリ言った伊藤さんが俺の手首の逆関節を決め
「!? いってぇ……!?」
あっという間に俺をベンチの下に投げ落とした
地面に強く身体を打ち付けて、つい苦しげな声が出る
「え、なん……伊藤、さん……?」
そして俺が視線を上げた時には、立ち上がった伊藤さんがスーツを直していて
次の瞬間俺を見下ろし
「私はこれで失礼いたしますので、手を縛って頂かなくて結構です」
と冷たく言い放った
「……っ」
その瞬間、俺の心臓がドクンと跳ねたんだ
