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枕営業~遥香はセックスを武器にした~

第20章 水谷文乃の事情①

本條が言う『思い過ごし』とは後付けであり
私をこれ以上落ち込ませてはいけないという
優しさだと感じ取った。

その相手を思いやる気持ちが少しでも
拓哉にあればなと思った。

「もう大丈夫です。コーヒーご馳走さまでした。
とても美味しかったです」
「楠田さんの大丈夫って口癖みたいだな」
「そんなことは……」

気付かなかった。

でも思い起こせば私は何かにつけて
『大丈夫』と口にしていた。

父親が経営する水谷建託が
HKホールディングスの傘下に入った時

梶ケ谷との婚約が決まった時

拓哉に本條をトラップに仕掛けろと
お願いというか半ば命令された時

全てにおいて私の答えは
『大丈夫』だった。

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