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第2章 はじめまして


おれがギターをやっていることを話すと、
神山は切れ長の瞳を輝かせた。

「リードギター?」

『今はバンド組んでないから柔軟になんでも弾くけど…
 もしここのバンドでやるならリードかな?』

「よっしゃ!俺ね、リズムギターやりたかったからさ、これはもう、出会うべくしてであったね、俺ら」

大袈裟な、と吹きだしそうになったけど、
神山は本当に嬉しそうだったし、何よりやつは、思ったことをストレートにぶつけてくるのが国際科らしくてとても刺激的だった。
そして初対面のわりに話が弾むおれと神山のことを、堀北が羨ましそうな目をして見てくるのも可笑しかった。


おれもそのまんま、思ったことを呟いた。


『そうだね。運命かも』

神山もふふっと笑ってから

「…Destiny」

と言った。


国際科生徒の滑らかな発音とその時の声音は、喋っているときより甘くて、切なさも、少しの希望も混ざっているような、高1の俺はその刺激を受け止めるのにすごく時間がかかった。



おれがフリーズしていることに気がついた二人は、話を元に戻した。


「で、島田。ギターなんだけど」

「俺たちのバンドでやってくれますか?」

二人は深く頭を下げた。


そんなことしてくれなくても、返事なんて、
話を聞いた時から決まっていたようなものだった。



『もちろん。おれで良ければ入れてください。』


返事を聞き終わって頭を上げた二人は、少年そのものという感じの笑みを浮かべて、バンザイをはじめた。


………めでたいなぁ


しかしおれには気になることが2つあった。



『お二人さん、ごめん、ちょっと』

「ばんざ…って、なに」

『ここさ、駅のホームだよね?』

「「うん」」


『おれたち…電車待ってたんだよね……?』

「「うん………………。あ。」」

二人は顔を見合わせた。

『ちょうど今来るみたいだし、これ乗ろ』

正直言って、おれだって忘れてましたけど。



でも、なかったはずの「はじまりへの期待」は

今さっき、確かに、おれの中に生まれた。

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