
好きになったらダメだよ
第6章 最低同士だからいいんじゃない?
花火を見る場所は校内であれば特に決められていないのだが、中庭が絶景のスポットらしく、生徒たちの数も多い。
ただしカップルやら好きな人を誘って見る子やらは、もう少し人目に付かないところに行くので、中庭に寄ってくることはない。
……刈谷さん、いない。
どちらかというと目立つタイプの彼女だから、見付けられないということはないだろう。
……伊都もいない。
もし本当になったらどうする?
あの時の伊都の言葉。
今も脳裏に響いてやまない。
「さあ!近付いてまいりました!みなさんカウントダウンをお願いします!」
生徒会長の弾むような声に、10、9とカウントダウンが始まった。
8、7、6……
数が減るにつれてテンションが上がる生徒たちの笑顔が眩しい。
5、4、3……
密かに楽しみにしている教師も多く、中庭には諏訪主任の姿もある。
でも、橘はいない。
2、1……
ガラッ。
ドォーン。
「間に合った。」
ドアの開くのと、花火の音と声がしたのは同じタイミングだった。
