
好きになったらダメだよ
第6章 最低同士だからいいんじゃない?
「……伊都。」
どうしてここに?
「女子の波から抜けて来るの大変だったんだよ。」
伊都はクスクス笑いながら扉を閉めて、ツカツカと中に入って私の前に立つ。
「伊都!なんで?なんで来たの!?」
可愛げのない私は、責めるような口調で捲し立てることしかできない。
「だって会いに行くって言ったじゃん。」
伊都の手が私の髪に触れ、そのまま腕の中に包まれる。
もう追い払ったり、乱暴に叩いたりすることなんてできなかった。
伊都の背中に手を回していた。
「橘先生から全部聞いたけど。」
「えっ?」
「彼氏と別れたんだって?それで自分だけが傷付かないのはおかしいって思って俺から離れようとしたわけ?」
伊都の腕の中で身動きひとつできずに固まっていた。
頷くことも躊躇われ、ただ花火の上がる音に意識を漂わせていた。
