好きになったらダメだよ
第7章 一緒に作ったらいいじゃん?
タレの匂いが広がる焼き鳥屋のカウンターに、私と橘は座っていた。
片手にはジョッキのビール。
テーブルには砂肝とかネギマとかが並んで、色気のイの字すら感じられない。
「いやー、お疲れ様。」
橘はネクタイを緩めて、カッターシャツのボタンをひとつ開ける。
「今日も疲れたなー。あ、テストできた?諏訪先生に任されたんだって。」
「もうすぐ完成するわよ。」
あとは見直して、配点を考えてぐらいだ。
「頑張ってるみたいだよ。」
「えっ?」
「川田。放課後も残って勉強してるし。あいつ、塾とか行ってないじゃん。だから、教師に分からないとことかも質問してるみたいだし。」
「……。」
「まじでやりたいこと見つかったのかもね。」
……やりたいこと?
将来の夢とかそういうことだよね。
「聞いてみたら?」
「いや……今はいい。」
なんでだろう。
聞くことに躊躇う。
私が踏み込んでいいのか分からない。