好きになったらダメだよ
第7章 一緒に作ったらいいじゃん?
私も橘もそれほどお酒が弱い方じゃないけど、飲む量が増えるにつれて、核心に迫る話が増えてきた。
「それでいつから付き合ってるわけ?刈谷さんと。」
今日聞きたい話はこれだもん。
そのために私は来たんだから。
「あー…去年の冬ぐらい?告白されたの真鈴に。」
「で、即オッケーしたわけ?」
「断ったに決まってんだろ。真鈴が俺のこと好きだろうなっていうのは、去年の6月ぐらいから感じてた。やたら会いに来るし、菓子とか焼いて持ってくるし。」
手作りお菓子‼︎
女子だな‼︎刈谷さん‼︎
「夏休み近付く頃には、冗談半分で好きって言われたりもした。でもその度に断ってた。俺、その年の春に彼女に裏切られたばっかりで。」
橘は苦笑して、カランとグラスの中の氷を鳴らした。
「5つ上の女だったけど、実は結婚してて、俺は不倫相手だったの。」
「げっ……なんじゃそれ⁉︎あんたみたいな男で騙されるのね。」
「俺、こう見えて一途だもん。」
いやいや、意外過ぎてたまげたわ。
「だから、恋愛はいいかなって思ってたんだけど……あいつらってさ、若さ故かガンガン来るだろう。怖いもの知らずっていうか、好きになったら止められないってか。」
それは何となく分かる。
まだ傷つくことを知らない青さがある。
私たちがもう過去に忘れてきてしまった純粋さが。