好きになったらダメだよ
第3章 声は出したらダメだよ?
「なにそれ!?話聞いただけでドキドキした!」
昼過ぎのカフェで、親友の早瀬夏美(ハヤセ ナツミ)の声が響く。
「し、静かに。」
私は人差し指を立てて唇にあてる。
周囲を気にして、首を左右に動かしてみたが、かちゃかちゃとフォークやナイフがお皿にあたる音、パンケーキを前にテンションの上がる女性たちには、彼女の叫び声など微塵も入っていないようだ。
ここはパンケーキの種類が豊富で、雑誌にも取り上げられているカフェで、連日人で溢れかえっている。
私がここに来たのは、伊都の家を出てすぐ、大学時代からの付き合いがある夏美から、「お茶でもしない?」と連絡をもらったからだ。
「イケメンで年下でエッチ上手いなんて最高だね。」
きゃっきゃっと、夏美はなぜか私よりテンションが上がっている。
彼女に事の経緯を洗いざらい話した。
信頼のおける彼女だからできた。
「教え子だよ…それなのにセフレなんて……」
パンケーキにザクッとフォークを刺すと、蜂蜜が隙間から皿に滴り落ちていった。
「まぁね。でもオフィスラブってことでさ。」
「オフィスラブってあのねぇ……」
そんな風に言う彼女はまさに今、オフィスラブの最中だ。
製薬会社の研究員をしているのだが、そこで働く先輩と付き合っているらしい。