好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
「真鈴、先に行ってて。俺、ちょっと話あるから。」
しかも呼び捨て!
「えー?つまんなーい。」
「愛莉ちゃんの顔見たら満足って言ったじゃん。」
「はいはい。じゃあ教室でね。愛莉先生、またおしゃべりしようね。」
結局、何をしたかったのか理解不能な真鈴ちゃんが準備室を出て行くと、すぐ様伊都に抱き寄せられ、キスされた。
「…んっ…んっ……ちょっと!」
伊都の胸板を拳で叩き、なんとか唇を引き離す。
「おはようのチューしとかないとなと思って。」
「いいの?」
「あいっ?」
「刈谷さん。」
「あー、あいつはいいの。」
「名前、呼び捨てにしてたくせに。」
言ってからしまったと思った。
伊都の手が伸びで親指と人差し指で私の頬を挟んだ。
「あれあれー?嫉妬してんの?」
「す、するわけないでしょ!高校生に!」
そう、嫉妬なわけない。ただちょっと聞いてみただけだもん。
「ふうん。つまんなーい。」
つまんない?何それ。
「じゃあ、教室戻るね。もうすぐ諏訪先生来るし。」
諏訪(スワ)先生とは、ここの数学主任のことだ。
伊都はもう一度、私の唇に軽くキスを落とすと、上靴を擦りながら、出て行ってしまった。