好きになったらダメだよ
第4章 大人って大変だね?
「はい、これかぶって。」
差し出されたのはヘルメット。
いや、ちょっと待って。
「ねぇ…これは?」
「ん?」
ん?じゃないって。
バイクは多分250ccクラスのものだろう。
茶色の座面と銀色の剥き出しになったエンジンの部分が、黒の車体を引き立たせてる。
「なんでバイクなんか持ってるのよ?」
「だって16歳になったら免許取れるじゃん。俺、4月生まれだからすぐ取れてラッキーだったよ。」
いや、そうだけど…そうなんだけどさ…
「一人暮らししてると、足がないと不便なんだよ。チャリじゃ行ける範囲にも限界あるし。あ、心配しなくても免許取って1年は経ったから、2人乗りできるよ。」
今さら口にするつもりはないが、バイクの免許を取るのはさすがに校則違反だ。
またひとつ、自分は危ない橋を渡ろうとしている。
でも、もう引き戻せないのも承知している。
「……遠くまで連れて行ってくれるの?」
「うん……俺が連れて行ってやるよ。」
私は伊都を拒むことはできない。
彼の差し出すヘルメットを受け取ることしか……