完璧少女の苦悩
第1章 そんな私
移りゆく景色をぼんやり眺める。
桜はまだつぼみの状態で、私の心をもやもやとさせた。
「梓もついに高校生か」
その言葉の主の方をゆっくりと見る。優しそうな横顔に、じわりじわりと侵食される。
「高校生になってもチビはチビなんだよなあ」
――そんな、一番上の兄の光汰くんとは対照的な、意地悪な笑みがミラーに映った。
「……なにさ。自分だって、高校まではちっちゃかったクセに」
「今は余裕で180はあるから」
声色まで意地悪な兄の篤くんは、後部座席から手を伸ばし、私のほっぺを引っ張った。
「あああ痛い痛い! なに!?」
「お前の顔見てると、なーんかオレと似ててイライラすんだよね」
「りふじん!」
そんな、いつも通りの小競り合いをしてると、光汰くんが「あ」と小さく声を漏らした。
「あれ、清南高校じゃない?」
指さされた方を見ると、……ああ。あれが。