完璧少女の苦悩
第1章 そんな私
ずっと先にかすかに見える、赤い建物。
篤くんも私のほっぺから手を離して目をこらす。
「けっこう遠いね。電車通学とかめんどくさいなあ」
ふう、とため息をついてから背もたれにもたれかかった。
中学は近くにあったからめんどくささが倍増だ。
「ぜいたく。近くがいいんなら清北にでも行けばよかっただろ」
「げ」
篤くんがどうでも良さそうな口調で言った。
清北、というのは、家の近くにある通称バカ高。
私が住んでる清町には清南高校と清北高校の2つの高校があって、清南中学校、清北中学校だった子はこの2つのどちらかに行くか、別の町の高校に行くかで二分される。
「清北なんて行ったら私のイメージが崩れちゃうでしょ」
言って、自分で笑ってしまう。
ばかみたいだ、と。
「イメージ重視の人生なんて何が楽しいんだか」
「篤くんはイメージを気にしなさすぎ。知ってる? 不良ってイチバンイメージ悪いよ」
「不良じゃねーよ!」
「だから、イメージの話」
私たちがくだぐだ言い争っている間にもどんどん清南に近づき、とうとう校門の前まで来てしまった。