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ぜんぶ二人ではじめて

第8章 告白フェスティバル.

side 一応匿名

はじめまして。ファンクラブの一人です。

ファンクラブ…か。

そんなのどうだって良かった。

俺は!

市川のことをずっと見てきた。

ずっとだ。

市川には忘れてしまった過去がある。

大きなショックを受けて、全然目を覚さなくて…。

俺は毎日病院に通ったんだ。

とはいえ、市川と知り合いだって周りは知らないし、面会も家族のみだったから、面と向かって話したのは一度きり。病院では話してない。

目を覚ましたと聞いた時、本当に嬉しかった。

だけど、大切なことも俺のことも忘れてた。

ショックを受ける二週間前…

俺は市川と出会った。

駅で。切符の買い方が分からないみたいだったから、声をかけた。

俺たちは同じ方向だったから、同じ電車に乗った。

電車内で、市川を喜ばせようと、ハンカチ遊びをした。

たまたま従姉妹がその二日前に来て、俺に披露してくれたのを覚えてただけだけど、そのおかげで盛り上がった。

駅に着くと、俺の方が先に迎えが来ていて、市川にまた会いたいって話して、手を振って、別れた。

市川の切なそうな表情…

今でも鮮明に覚えてる。

そんな淡い出来事。

俺にとっては初恋。

俺の初恋は、市川の姉、百華が死んだことによって、忘れ去られた。

ショックが大き過ぎた。小二の市川には受け入れることも受け止めることも出来なかった。

しかも百華は市川のことを庇って死んだんだ。

葬式には学園の同級生や先生たちが参列したけど、市川は意識が戻らなくて、参列できなかった。

市川のお父さんが、七海はショックを受けて寝込んでしまっている。目が覚めたとき、事故のことは敢えて伝えないでそっとしておいてほしい。
そう言った。

だから、俺は何もアクションを起こせない。

もし余計なことを言って市川がおかしくなったら…とか考えたらできない。

市川は未だに百華のことは忘れてる。

俺のことも…。

そう思うと毎日モヤモヤする。

吐き気もする。

でも、極上のかわいさに俺は勝てない。

他の人を好きになれば楽なのに…

いつか支えが必要になった時、必ず俺がそばにいて、守ってやる!

そう決めた。

だから待つ。

待つことできっと幸せになれることもある!

ヤスくんに惹かれてるのが分かる。

切ないけど…

仕方ない…

いつか…

そう信じて…

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