テキストサイズ

ぜんぶ二人ではじめて

第31章 深まる…

うんと我慢した……

次の休みが何度かあったのに、父さんと合わなくて……しかも、ヤスくんがアルバイトを始めて……週末に数時間……遠慮して会いたいって言えなくて……短期のバイトだから我慢我慢って言い聞かせてた。

今日で2月最後。

やっと来たお休みの日。

私たちは電車に乗って、じぃじたちの街より5駅遠くに出掛けた。

そこはいわゆる、観光地。リゾート気分が味わえる素敵な場所……らしい。

ヤスくんが連れていきたいって言ってた場所。

電車を降りて、歩いて5分……

「着いたよ。」

と、ヤスくんが言う。

そこは高級感漂う、ホテル!

「え!ヤスくん?」

「入ろう?」

「高そうだよ?!」

「大丈夫。」

「ほ、ほ、ほんとに入るの?」

「あぁ。大丈夫。おいで?」

そう言った。

伸ばした手を掴んで、一歩、また一歩……と、高級ホテルに入った!

緊張する!!

ヤスくんが、

「チェックインするよ。」

そう言って、受付に向かう。

「予約した根岸です。」

予約してくれてたの?!

「根岸さま、ようこそお越しくださいました。大人の方、2名で宜しかったでしょうか?」

「はい。」

「お部屋は773号室です。こちらが鍵になります。」

と、一通り説明を受け、部屋へ。

「私、泊まりになるなんて言ってきてないよ。」

ヤスくんに話す。

「大丈夫だって。俺から話してあるよ。」

「え?本当に?」

「うん。二人とも良いよって言ってたよ。」

「そうなの?でも、お着替えとかないよぉ。」

「大丈夫だって。ほら。」

そう言ってヤスくんは前もって届けておいた荷物を開けた。

「あ。私の服……」

小さなボストンバッグの中身を確認した。

「お母さんがやってくれたんだよ。」

「そう……でも……どうして、私に話してくれなかったの?」

そう言ったら、ヤスくんが、後ろから抱き締めて、

「ナナちゃんが驚く顔と喜ぶ顔が見たいからだよ。」

不思議……本当に心がほんわか温まる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ