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ぜんぶ二人ではじめて

第37章 初試合

side 泰宏

試合展開は、どちらが優位とかなくて、ギリギリ勝てた感じだった。

ホームランは奇跡に近い。

相手ピッチャーの癖をよく見ることが出来たからか。

結局、安打数では負けてたし、俺のホームランでしか加点できなかった。

内容としては、満足いかないが、俺のデビュー戦としては、まぁ、良かったかな。

お互いに礼をして、挨拶したときに、

「お前、この前までいたか?」

と、聞かれ、

「いえ。先日、入部したばかりです。」

と、答えた。

「良いやつ隠してたなー。」

そう言って相手チームのピッチャーが笑ってた。

すげぇ嬉しい。

しかしながら、このチームの半数以上がナナちゃんのことをチラチラ見ていることは分かってる。

うちの野球部でも俺とナナちゃんが付き合ってることを知ってるやつは一握り。

俺は、母さんと、ナナちゃんのお母さんに挨拶したあと、ナナちゃんにお礼を言った。

外へ通じる通路で話す。

相手も出入りしてる。

視線を感じてるのは変わらない。

ナナちゃんが俺のことを見て、頬を赤らめた。

ナナちゃんがタオルを俺に手渡してくれた。

なんでかさらに赤くなる。

「どした?顔赤いよ?」

俺はナナちゃんのおでこに手を当てた。

「あ。大丈夫だよぉ。」

恥ずかしがり屋のナナちゃんが、上目遣いで話す。

「なんで、夜泣きの当番、3日もやったの?」

「母さんの顔色が良くなかったから……」

「そっか。それならちゃんと言わないとね。お父さん、心配してたよ。俺も心配だった。一人で無理するなよ。」

そう言って、頬を掌で包んだ。

「うん。ありがとう、ヤスくん……」

すげー……キスしたい。

「片付けたら帰って練習あるから、待ってて?」

「うん。私も、このあと帰って練習だよ。お昼は一緒に食べよ?」

ナナちゃんが俺の手に自分の手を重ねて、スリスリ頬ずりをする。

「おぅ。じゃ、あとでな。」

「うんっ!」

そんな光景をまじまじと見ているのは、俺とナナちゃんが付き合ってるのを知らない、うちの野球部のメンバーと、ナナちゃんに好意を抱いていた、塚本学園の野球部、吹奏楽部の連中だ。

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