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ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

チャリをこぎはじめて5分。この先は緩やかな上り坂だ。

美月が遠慮して、あまり捕まらない。

「ちゃんと捕まってないと、落ちるぞ?」

「あ……うん。」

ギュッ……と、捕まった美月。

やんわり当たった胸……。

美月も中学生だもんなー。成長したなー。

なんて、オヤジみたいなこと考えてた。

「ねー?さっき、七海ちゃんに何したの?」

「え?」

「キス?」

「まぁ、そんなとこ。見えなかったろ?」

「うん。ヤス兄でかいし。七海ちゃん、小さいし。」

「なんだ?美月もキスとか興味あるんだ?」

「別に!そーゆーわけじゃないけど。」

「隠すな隠すな。お年頃なんだから普通だろ?」

「まぁ……ね。」

背中で照れてるのがなんとなく分かる。

「それはそうと、家着いたらまずは円香に話すぞ?」

「うん。」

「美月が元気がない理由はバスに痴漢がよく出るらしく、友達に相談されてたら怖くなったとでも言って、母さんとおばさんに頼むからさ。」

「うん。」

そういう作戦にして、俺は家に着いてまず、円香に話した。

円香は美月に水くさい!って言いながら、ポロポロ泣いていた。

そして、母さんとおばさんに話し、明日から隔週交代で、送迎するってことになった。

夜、美月が家に来て、円香と何やら頑張って作ってた。

ガッシャーン!

すげぇ音を立てたから、キッチンに入ろうと、

「大丈夫か?」

声をかけたが、

「だ、大丈夫!食器落としただけだから!」

「散らばってるから入ってこない方が良いよ、お兄!」

と、言われたので、

「怪我すんなよ。」

そう声をかけて、部屋ではなく、キッチンが近いリビングで待った。

夕飯時に、

「ヤス兄、お礼したいから、とりあえず……作ってみたの。食べてね?」

と言って、何だろう、コレ……

食べてみた。

「おいしい?」

そう聞かれて、微妙とも答えられず……

「あぁ。」

しか、言えなかった。

回鍋肉らしいが……

なんだかなー……

「絶対、おいしいって言って食べてもらえるもの、次は作るね!」

そういってた。

うーん……ナナちゃんに教えてもらえよ。

でも、まぁ…なんつーか、そういう一生懸命なとこ、可愛いよな。マジで。

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