テキストサイズ

ぜんぶ二人ではじめて

第38章 ギリギリ……

side 泰宏

彩月の見舞いのあと、また三人でバスに乗る。

あたりを警戒しながら、どこから乗ってくるか、確認したかった。

美月はとりあえず座らせる。美月は通路側に座り、その隣にナナちゃんに立ってもらう。

ナナちゃんは俺の目の前に向かい合わせで立ってる。

病院を出発して2つ目のバス停から、例の男が乗ってきた。

俺は顔、背格好や持ち物などを覚えた。

そいつが、美月を見つけた。でも、俺とナナちゃんがいて美月には近づけない。

ナナちゃんの隣に立った。行きのバスで一度会ってるから、警戒されるかと思っていたが、そんな素振りもない。

こいつ、本当に美月狙いだ。

だからってこのまま家までバスに乗せるわけにもいかない。俺たちはナナちゃん家の近くのバス停で降りた。

男は降りなかった。

ナナちゃん家から俺たちの家まではバス停でいうと、3つ先だ。

「美月、歩けるか?」

「ヤスくんが乗せて行ってあげたら?」

ナナちゃんが言う。

「そうするか?」

美月に聞く。

「えっ?ヤス兄と二人乗り?」

「あぁ。」

「……ヤス兄は良いの?」

「別に良いよ。」

「じゃあ、お願いしようかな。」

「おう。ほら、乗れよ。」

「う、うん。」

「二人とも気を付けてね?!美月ちゃん、元気出してね?」

ナナちゃんが優しい言葉をかける。

「ありがとう、七海ちゃん。」

「じゃあな。ナナちゃん。また、明日。」

「うん。安全運転でね。」

「あぁ。……と、ちょっと美月、向こう向いてろ。」

「ん?」

「ナナちゃん。無理は、絶対、すんなよ?」

「はーい。」

ナナちゃんの前に立つ。

「約束な?」

「うん。」

チュッ……

おでこにキスをした。

「なっ!」

真っ赤になって、口をパクパクしてる、ナナちゃん。

めちゃくちゃ可愛い。

「じゃあな。美月、もう、良いぜ。」

そして美月と帰った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ