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ぜんぶ二人ではじめて

第41章 誓って…

今はヤスくんのことは考えないことにしよう。竜一くんの言う通り、疑って苦しむのは止めよう。

じいちゃんちに着いて、桜の木を挿し木するための鉢を探す。

「これでいいかな!」

「市川、シャベルは?」

「そこにあるよ。」

指差して促す。

「土はどうするの?」

「鹿沼土が良いんだよね。」

「へー。そう言えばあの桜の木、もう枯れかかってたね。」

竜一くんが残念そうにいう。

「もう老木だから、仕方ないよ。本当は今、剪定しちゃいけないんだ。病気とかになりやすいんだって。でも、老木から折れた枝の所に新芽があったから…」

「命のバトンだね。」

そんな素敵なことをいう、竜一くん。

「うん!あとは土をかぶせておしまい!」

「オッケー!」

二人で土をかけてると、手が重なった!

「あ…ゴメン!」

二人で同時にそう言って、パッと離した。

目が合うと、顔が熱くなって、全身が心臓になったみたいに大暴れする。

それをバレないように繕って、

「…手、洗おう?」

そう言って、家の中へと案内する。

ドキドキドキドキ…

外でも洗えたのに、動転してるためか、家の中に入る。

手を洗って、すぐに帰ってもらうのも悪いと思って、お茶を出すからと深澤家にある私の部屋にいく。

さっき、重なった手が…熱い…。

「お茶…どうぞ。」

「あ。サンキュー。」

「送ってくれてありがとう。」

「いいえ。…桜って、ちゃんと木になるの?」

「分かんないけど、ちゃんと育つようにお世話するよ。」

「俺も時々、見に来ても良い?」

「うん!」

優しい表情だった竜一くんが急に真剣な表情になった。

「ちょっと教えて欲しいんだけど…」

そう言葉を付けて、私が頷くのを見て、

「さっき…手、触った時…市川もドキドキした?」

と、言った。

「あ…」

コクン

一つ頷いた。

「手、貸して?」

そう言われて、迷う。

けど、優しい穏やかな空気が私を素直にさせた。

きゅっ…

優しく握る、竜一くん。

ドキドキがまた始まった。

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