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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

そんな、溢れる想いが今はとても嬉しい。

ヤスくんにも同じようなこと言われた時期もあったのに。

忘れていくわけではない。

私は憶えておくよ。

ヤスくんとのたくさんの出来事。

「ありがとう、竜一くん。」

竜一くん…好きだよ…

ふと、そんな風に思ってしまった。

あっちがダメならこっち!みたいで申し訳ないけど…

「涙、拭きなよ。」

そう言って、ハンカチを差し出してくれる。

「ごめんね…。困るよね。」

こんなに泣かれたら大抵は困ってしまうだろうなって、そう思った。

「俺は市川がどんな理不尽なことを言ってきても、全く困らないよ。」

ゴロンとしながら言う、竜一くんの顔は、平気な顔だった。

ボロボロ涙が溢れてきた。

「そんな…こと、言うから…」

「泣きたきゃ泣けば良いんだよ!俺しか見てないし。好きなだけ泣きなよ。」

ハンカチを受け取って、涙を拭った。

「うっ…」

竜一くんが頭を手でポンポンてしてくれる。

好きだなー、コレ。なんでか落ち着くんだよね。

目を閉じて、目の前の竜一くんを思う。

温かい…優しい…嬉しい…

心が広い…私のこと一番に考えてくれる…

「泣いたら頭スッキリすることもあるだろ。」

「うん…」

頭を撫でてくれてた手が一番今必要…だから離れていかないで。この時間はすぐ終わってしまうことくらい分かってる。

だけど、竜一くんは、自分から終わりにはしなかった。

私が泣き止んでも撫でてくれて、呼吸が落ち着いても撫でてくれてた。

そして、

「落ち着いてきた?」

そう聞いてきた。

「うん。ありがとう、竜一くん。」

そう答えてから、

「もう撫でなくて大丈夫?」

なんて聞くから、恥ずかしくなって、

「う、うん!」

噛んじゃった。

竜一くんとほぼ同時に、身体を起こして座った。

恥ずかしくて、まともに顔が見れなくて、俯いてた。

「ハンカチ、洗って返すね?」

そう言うと、

「別に良いよ。どうせ帰ったら洗濯機が洗うんだし。そんなこと気にするなよ。」

そう言って、私が持ってたハンカチを手から取った。

「あ。でも…涙だけじゃなくて、鼻水もついてるかもしれないし!恥ずかしいから…洗ってから返させてぇ。」

懇願するようにそう伝えた。

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