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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

「やっべ!忘れ物した!先帰ってて!」

そう言って輝くんがいなくなった。

今日は輝くんと竜一くんが護衛当番だったから、竜一くんと思いがけず2人きりになった。

「今日、ヤスくんに話そうと思ってたの。」

「そっか。でも週末の試合終わったらの方が良いんじゃない?」

竜一くんが提案する。

「竜一くんはそれで良いの?」

頷く竜一くん。

緑地公園入り口に差し掛かる。

「私、ここに寄りたいんだけど、良い?」

「俺も一緒でも構わない?」

「うん!」

緑地公園は遊具はほとんどない。

小さい子が使う遊具と大人も使えそうなのはブランコだけ。

あとはただただ芝!

芝の周囲を取り囲むように、走りやすそうな素材で出来た、道がある。

その道の周りにはたくさんの木々たち。

その木漏れ日をたくさん感じたくて、ハナミズキの下に行く。

「俺、この公園こんな奥まで来たの初めてだ。」

「そうなんだ。お行儀悪いけど、ここに横になって良い?」

なぜか竜一くんに許可をもらおうとした。

「好きにして良いよ。俺も横になって良い?」

公園に人はほとんどいない。

「うん!」

ゴロン!

2人で雑に横になる。

隣り合わせではない。

よく晴れた春の空を見つめる。

ヤスくんとの思い出がたくさん蘇る。

目を閉じて、瞼の裏に焼き付いて離れなかった、大好きだったヤスくんの笑顔が…曇っていった。

ぐずっ…

涙が出てた。

「ヤスくん、ちゃんとサヨナラしようね?!」

頭の斜め上から、

「…市川…話、聞くよ?」

と、竜一くんが話しかけてきた。

「…ありがとう。…今日みたいな…いるのに忘れられたみたいの、なんかツライ…。ヤスくんと別れるの…話したいのに…」

ぐずっ…

鼻をすすりながらそう言って、流れる涙を無視してた。

「そうだよな。今までと明らかに違うのに、向こうはそれが、普通みたいな…嫌だよな。」

「うん…こんなこと、待たせてるのに竜一くんに言うべきじゃないよね。」

今すぐどうにかなりたいとかじゃないけど、竜一くんのことは、…気になってる。

「いいって。気にすんなよ。ヤスくんのこと、ちゃんとケリつくと良いな。」

「うん。」

「俺は…市川が一番幸せな方向に向かえばそれで良い。」

広い心が眩しい。

ありがとう…竜一くん。

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