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ぜんぶ二人ではじめて

第43章 疑念

竜一くんがもう一度頬にキスをくれる。

竜一くんの切なくて甘くて優しい頬へのキスに、完全に心惹かれた。

唇が離れると、手を重ねる。引き寄せて、竜一くんの胸にまた納まった。

ドキンッ!ドキンッ!…

「…無駄なことなんてないんだな。」

抱き締めながら切ない声で言う。

「好きだ!何度言っても足りないくらい。好きだ!市川…俺は市川七海のことを、誰よりも愛してる!」

涙が流れた。

心が伝わってきて、

「竜一くんッ…」

名前を呼んだら抱き締めてくれてた腕を緩めて、見つめた。

「ありがとう…。たくさん想ってくれて…。嬉しくて…切なくて…いつも、本当にありがとう。私にとって、竜一くんはとても大切な人だよ。幸せたくさんありがとう。」

見つめるしかなくて、恥ずかしいけど、見つめながらそう伝えた。

涙目からぽろっと涙がひと雫零れた。

「……市川…。泣かないで…」

優しさが沁みる…

こんなに想ってくれる人なんて…そうはいない。

竜一くんの心には私しかいないんだ。

そう思ったら、自分から竜一くんに抱きついた。

「ありがとう…竜一くん、ありがとう。」

こういう人の元に素直に甘えられたらどんなに楽だろう。

そんなことが頭を過る。

身体を少し離して、見つめる。

切なくて甘くて穏やかな時間…

好きだなぁ…竜一くんのこと…

素直にそう思った。心の底からそう思った。

「うん…」

手を繋いだままだった。

帰る時間になって、見送ることにする。

竜一くんに先に歩いてもらう。

「また、ね?」

「明日、迎えに来るよ。市川。」

「うん!待ってる。」

軽く手を挙げて遠くなってく後ろ姿を見送る。

竜一くんの後ろ姿はどうしてこんなに懐かしいの?

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