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ぜんぶ二人ではじめて

第44章 告白と変化

side 七海

野球部は毎日のように練習か試合。

順調に勝ち進んで決勝まで行った!

春の甲子園は準優勝で終わった。

ヤスくんがケガをした。アキレス腱を切るという、大ケガ。彩月ちゃんと同じ病棟に入院となってしまった。

「市川。行くよ?」

竜一くんが、今日は、一緒にお見舞いに行ってくれる。

「うん。」

結局、別れ話はできてない。竜一くんも仕方ないよって言って見守ってくれてる。

「鍵見てもらうからチャリで行きたいんだけど、2ケツで良い?」

竜一くんが申し訳なさそうに尋ねる。

「うん。良いよ。重くないかな。」

荷台にバスタオルを括り付けておいてくれた。

優しい竜一くん…

竜一くんはまたグッと身長が伸びて、クラスで一番背が高い!

「軽い軽い!これもトレーニングの一環と思えば何ともないけど、軽すぎてトレーニングにならないかも。」

なんて言って明るく笑ってる。

「ちゃんと捕まっててね?」

竜一くんが言う。

「うん。」

とは言え、サドルに捕まるくらいしかできない。

親衛隊の誰かと一対一で病院に行くことも、自転車二人乗りで、というのも初めて。いつもは、バスだから。

「ごめんね。今日は、みんなこの時間、用事があって、俺一人なんだ。」

「みんな忙しいのに、いつもごめんね。」

「全然。二人だと……嫌だ?」

「ううん。」

竜一くんはこんな宙ぶらりんな私に変わらず優しくしてくれる。

「良かった。あ。少し揺れるよ?」

前を見ると、工事のため、砂利道になってた。

「うん。……キャッ!!」

ガシッ!!!

「だ、大丈夫?」

揺れに耐えきれず思わず竜一くんの背中にしがみついちゃった。

「……ご、めんね。」

胸に回した腕をまたサドルに持ち替えようと腕を片方離そうとした。

「良いよ。ちゃんと、捕まってなよ。」

そう言って竜一くんが離れないように、腕をグッと引き寄せた。

ドキッ!!!

背中……広い……

竜一くんの鼓動が聴こえる。

ドッドッドッドッ……

私の鼓動もドキドキドキドキ言い始めた。

ドキドキが移ったのかな?

恥ずかしくて、何も話せない。

ちゃんと別れてから…

ずっと待っててくれてる、竜一くん。

待たせててごめんね。ありがとう、竜一くん。

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