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ぜんぶ二人ではじめて

第8章 告白フェスティバル.

side 泰宏

俺と市川さんがフルートで選ばれた!

すげぇ嬉しい!!!

部活中、ずっとそばにいて良いんだもんな!

俺は市川さんと目が合うと、市川さんに見えるように、小さくガッツポーズをした。

市川さんは泣き笑いみたいな顔になってた。それは本当に嬉しくてたまらないって表情だと思った。

ほんとは駆け寄っていって、抱き締めたかったけど……

部活のあとの後片付けは、一年生が担当する。とは言え、譜面台くらいしか片付けるものなんてないんだが。

俺と市川さんが今日は当番になった。

個別レッスン室に片付けるため、ほぼ同時に入った。

「市川さん、お疲れ様ー。」

他愛のない会話……

二人きりは緊張する。

昌樹も彩月も教室で待ってる。

先輩方もみんな帰った。

ここに、いるのは!

俺と市川さんだけ。

片付けてたら、指先が触れ、俺と市川さんは、

「あ。」

と、同時に反応した。

心臓がやかましくて……

今はまだ視線が合わない市川さんを見つめることしかできない。

細くて、しなやかで、色白の指。

この指で、毎日頑張って練習して、さっき、すごく良い演奏したんだよな。

お疲れ様!

そう思った。

「ゴメン……」

そう言って手を離そうとするから、もう少し、市川さんの熱を感じていたくて、思わず握りしめてしまった。

「え?」

ものすごく可愛い目……

重なった瞳のせいでまた心臓が暴れだす。

ドキドキしながら、

「……市川さんの音色、すげぇ心に響いたよ。この手で、頑張ったんだよな。」

そう言った。

何も言わず、真っ赤な顔の市川さん。

市川さんも、俺といて、ドキドキしてるんだな。

今なら二人きりだ……

握った手をそっと、引き寄せて……

抱き締めた。

「あっ……ヤスくん!!!」

ドキンドキンドキンドキン……

抱き締めて何を言えば良いんだ?

ただ……抱き締めたかった。

「ごめん。抱き締めたかった……ドキドキ……聴こえる?」

「……ん……」

真っ赤になってる彼女がすごく可愛くて、俺は、

「可愛いよ。」

優しく見つめる。

鼓動が競争してる。

チャイムに驚いて、

そっと放して、

「帰ろう?」

そう言った。

「ぅん……」

と、小さく答えて、キミは少し下を見ながら歩く。

キミといると、ドキドキが止まらないよ。

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