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理佳のトリセツ~愛あるセックスは智也だけ~

第26章 今は耐え忍ぶ時

「出勤前に観ちゃダメだったね」

美鈴の目は充血していて腫れていた。

観終わったというのに未だに鼻をすすっている。

「化粧で誤魔化せるでしょ」
「そうだね。今夜はメイク濃くなっちゃうよ」
「それより美鈴……」

映画を観ている最中
私には分からないが
最大の山場だったのかもしれない。

ソファーに並んで座っていた私の手を
美鈴が何気無く握った。

当然ながら握り返すことなどせず
不自然だったが気付かないフリをした。

「ん?どうしたの?」
「ううん。いい映画だったね」

私の手を握った意味を聞こうとしたが
聞けずにいた。

聞いてしまうことが怖かった。

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