私の熊
第1章 熊さん
「もしもーし」
携帯越しに言う。と、
熊さんは決まってこう言う。
「ばあん!」
机を叩くような効果音。
これを聞く度、毎回安心するんです。
何故かは分からないけど。
「寂しかったの?」
「んーそう言う訳じゃないよ?」
本当は物凄く寂しかった...
けれど加奈子は、そう素直に答えられる事が出来ず、決まって言い訳をしていた。
「じゃあどういう訳?」
そう問い詰められて黙った。
すると、熊さんは決まってこう言うんです。
「かなこ、なんで嘘付くの?」
「嘘じゃないよ?」
「かなこ?嘘ですよね?」
熊さんは少し意地悪なんです。
私の口から本当の事を聞き出そうとする。
そしてそれは私が素直になるまで終わらない。
だから私は直ぐに自分から折れる。
「むう...ごめんね?」
「まったく、かなこは直ぐ嘘付くから」
「そんな付かないもん!」
「付くよ?」
私も熊さんも、ああ言えばこう言う。
私は言葉を詰まらせた。