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リモーネ

第3章 卯の花とフユベゴニア

かえで先輩の提案(軌道修正。というかもともとかえで先輩のせいだろ。)により、ようやく校庭へと出た剣道部員男女計13名

星那以外は蜘蛛の子を散らすように勢いよく走り出す。


県立第二高校は進学校であるが、運動部へ入部している生徒も多く、校庭もかなり広いために、そこでは野球部を始め、サッカー部、陸上部など様々な部が練習に精を出している。


走り出した剣道部員達はその中に勢いよく混ざっていく。

邪魔なのかそうじゃないのか微妙な行動だが、歓迎されているように見える辺り、邪魔ではないのだろう。

俺はそんなことを考えつつきちんと10秒を数え、とりあえず他の部に、混ざりきれていない同学年に鬼を押し付けた。

なんだか気乗りしない俺は、隠れ場所でも探そうと思い、そんな場所の多そうな中庭へ走り出した。


4階建てと5階建ての校舎に囲まれるようになっている中庭は2階以上の校舎からは割と見通しがきくが、1階から見る限り地上での見通しはそこまではよくない。

中庭に足を踏入れるのは初めてだが、思った通りに見通しはそこまでよくなくて、緑が多くて、快適だった。

校舎に囲まれているだけあって中庭は結構広く、なんだか心がうきうきしてきたため、俺は隠れ場所を探すついでに中庭を散策することにした。

色々な種類の木や花のなかを歩き回るうちに、大きなハナミズキの木の奥に背を向けている赤いベンチを見つけた。

座れるところがあるなんてラッキー。と喜んでそこに近づくと、誰かの足が見えた。

まさかこんなところに人がいるなんて思ってもいなかった俺は驚いて、思わず、あっ。と声をあげてしまった。

その声によって俺の存在はその足の持ち主に間違いなく気づかれているので、無言で去る訳にもいかず、すみません。といってその場を去ろうとすると、

「あ、セナちゃんじゃん。」

と言う聞き慣れた声がして、それとほぼ同時にかえで先輩が木の向こうからひょこっと顔を出した。

「え、あ。
えっと、かえで先輩はこんなところで何をしてらっしゃるんですか?」

いまだに驚いている俺はとにかく話をつなぐ。

「セナちゃんと一緒。サボり」

かえで先輩はベンチに近づく俺を目で追いつつ、笑いながら答える。

「お、俺はサボりじゃないですよ。」

かなり図星な発言に肩をびくりと震わせつつそれを否定する。




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