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リモーネ

第3章 卯の花とフユベゴニア

「…ただいまー。」

玄関を開け、そう言っても返事を返す人は誰もいない。

でも一人暮らしというわけでもない。

俺にはちゃんと家族がいる。

父、姉、兄。の3人だ。

母は俺が小学生の時に病気で亡くなった。

父は日本の巨大グループのひとつ、竜胆グループの会長であまり家にいない。

母が亡くなってからこっちは県外の本社近くの別邸にすんでいるような状態だ。

兄は俺より4つ上の20歳。現在一人暮らし中だ。

東大でなにか難しい研究をしているらしい。

父も兄も俺とは違いすぎてわかり合える気がしない人達だ。


そして姉は、俺より7つ上の24歳。

竜胆グループの傘下で大阪にあるデザイン事務所でデザイナーをしている。

コネで会社に入ったのに近いのだが、姉にはデザインに関する才能と社交性が溢れんばかりにあるため、うまくやっているようだ。

姉は俺のはは親代わりのような人で、大阪に行くと言ったときは正直絶望したし、兄が東京に行くといったときとは比べ物にならないほど悲しかった。

姉はそんな俺をきづかって、何かあったらいつでも電話して良いし、会いに来て良いし、会いに来る、と言ってくれた。

このような感じで、一人暮らしのような生活は高校に入った4月から始まった。

この生活が始まってまだ1か月もたっていないが、慣れた。


今までの生活に姉がいなくなっただけだ。


ふと、スマホが目に入った。

手にとって画面をつけ、姉の電話番号を表示する。


…姉に、電話してみようか。かえで先輩のことを。

でも、かえで先輩って男。

俺も、男。


これはどういう状態なの。

とりあえず普通じゃないことだけはわかる。



…普通じゃないんだったら人にはいっちゃいけないことなのかな。

誰にも言ってはいけない。



…じゃあ、姉にも?


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