リモーネ
第7章 ツツジ
俺はただ泣いていた。痛みのなかで。
さっきあの男に殴られたお腹がいたい。
「痛いよ…ママ…助けて…」
さっきあの女につねられた手の甲が痛い。
「ママ…どうしてこんなことするの?僕、おトイレいきたいよ。」
さっきあの女に縛られた両腕が痛い。
「ママ…どこにいくの?」
さっきあの女に置いていかれた部屋のなかであの女のことを呼び続けた喉が痛い
「ママ…帰ってきてくれた…ね、僕、幼稚園の時間なの。手、はずして?」
さっきあの男に蹴られたおしりが痛いけれど、幼稚園はいかなちゃだめって、あの男があの女に乗っかりながら言ってた。
「先生、僕、元気だよ。
手の甲…?
机にぶつけちゃった!」
さっきあの女が冷たくなってて、あの男がおまわりさんに連れていかれた。
「僕は、ふじかえでだよ。ママはどこ?」
―さっき、死んだんだよ。