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リモーネ

第8章 セッコク


そうか、この、部屋中に充満してしまった雄の香りのせいか
とか、
たぶん、この、部活した下着をもう一回着るのが嫌だからってジャージのハーフパンツだけはいたから気持ち悪いのか
とかって考えたが、どれもそれらしいけど決定的ではなく頭を悩ませていると、寝ていたはずのかえでの呼吸が荒くなった。

「え、ぇ?え??どう、え、どうしたの?かえで!?」

どうみても寝ている様子で荒れる呼吸に何かの発作かと焦り、取り合えず肩を叩いてみてもその苦しそうな顔は和らがず、救急車を呼ぶことまで考えてから、ふと神崎先輩のことが頭をよぎった。

『かえでがおかしくなったら飲んで』

そう言われて渡された紙袋のなかには小びんとメモ帳。

『半分は飲んで、半分は口移しでメープルに。』

あまりにも動転していた俺は何も考えずに小びんの中身を半分のみ、再びかえでを起こしにかかった。



その結果、童貞も卒業した。


本当に、うっすらと覚えている自分が憎いような醜態をさらした。

穴があったら入りたいとはこの事で、それに追い討ちをかけるように、朝、起きるとかえでも俺も素っ裸で、なのにムードの欠片もない会話をした。

そこまでなら、まだ、男同士の恋愛では考えられるかもしれない。

問題はこれからだ。

そもそもの、かえでが過呼吸になった理由(過呼吸というものの症状はかえで本人から聞いた)が、俺の想像などを遥かに越えるものだったのだ。



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