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奇跡を生み出す腕を手に入れた、大阪の兄ちゃんの話を実話で公開

第9章 貧乏〜貧乏〜

 あの、大きなリングを、出した。


 これが、自分の原点だと言っていい。


 しかし、僕が出来るのは、4本リングだ。セットになっているのは、6本ある。


 それをすべて使えなきゃならない。


 マジックの百科辞典にリングの手順が載ってあった。


 僕は店のレッスンが終わって、夜の10時頃から、深夜1時まで何度も練習した。


 安いアパートだったため、カチャカチャという金属音がやかましいと、苦情もあった。


 朝、起きれなくて、遅刻したこともあった。


 三回立て続けに遅刻したとき、「今日、お前は午前中来るな!! 昼から出てこい」と、帰らされた。


 本当はダメなんだが、自分はチャンスだと思った。


 なりたくて、理容師やってるんじゃない。


 チャンスがあればいつでも辞める。


 生きる道は、マジックだと思い込んでいた。


 店のマスターは、帰らせることにより戦力外だと、屈辱を覚えさせ、遅刻は本当は許されないことだと教えたかったのだろう。


 だが自分は、音を気にせずに練習が出来ると、大喜びだった。



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