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奇跡を生み出す腕を手に入れた、大阪の兄ちゃんの話を実話で公開

第9章 貧乏〜貧乏〜

 春坂俊樹、自分の中ではラリ夫と呼んでいた。


 けど、実際には、そんな呼び方はしてませんよ。


「えっ、春坂くん?」


「そう……でも、お前の名前を忘れたんや……」


「昭玄武です」


「あーーっ!! そうだった!」


 やっぱり忘れていたか。


 実は、ついさっきまで、近くのマジックショップにいたらしく、店を出て帰ろうとした時に、僕と出くわした。


 まったく、イメージが変わっていたし、また、こんな場所で会うなんて思ってなかった。


 僕も頭のmicroSDから、引っ張り出すのに苦労したわ。


 たしか、マジックの大会から、会ってないんだ。


 雨避けで、駅の中に入り、ちょっと広めの場所で荷物を置いた時、春坂が話しかけた。


「お前、ストリートマジシャンやってんだ」


「いや、ちょっとでも稼げるかなって思ってさ」


「うん、でも、この辺はやめとけ、大道芸人とミュージシャンが多いし、注目されるにはよほどインパクトがあるネタをぶっこまんと……」


 それは、わかってはいる。



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