愛しの殺人鬼
第1章 ひまわり畑
「んんっ」
苦しい、息が、続かない。やっぱり、この行為になんの意味があるのかわからない。
苦しくて涙がぶわりと浮き上がる。私、キスで殺されるのかもしれない。
と、
私の異常に気づいた男は一度離れて、私の額にそっとキスを落とした。
「大丈夫。鼻で息をしながら俺に体を預けて」
「え……んッ」
驚いた。さっきまで飄々としていて、私を殺そうとまでした男が、あまりに優しい顔で、声音で私を宥めるから。
「ん、」
下唇を啄むように挟み、今度は覆うように唇を食む。角度を変えながら何度も繰り返し啄ばまれ、息をしようと開けた唇から熱い舌が侵入してくる。
熱い。
溶ける。
蝉の声が遠のいていく。
体の感覚がなくなって、上顎に触れられるたびにずくりと腰に強い刺激が与えられる。
「上顎、弱い?」
「は…ッし、らない…んんッふっ」
小さく笑った彼がまた上顎を刺激して、それから奥で縮こまる舌を攫っていった。
「んぁ、はっ」
ちゅく、ちゅく
どちらの唾液かわからないくらい絡まり合い、収まりきらなかったそれが顎に伝って落ちる。卑猥な水音が頭の奥で響いて、私の体温はどんどん上昇していった。