愛しの殺人鬼
第1章 ひまわり畑
「一生セックスなんてしたくない」
日も昇って間もない時間。力の抜けた声が空気に消えた。
「こんなに痛いなんて知らなかった。キスがあんなに苦しいなんて思いもしなかった…!!」
まだジンジンとするそこを労わりながら、傘を杖代わりにヨロヨロと歩く。
若気の至りとはこのことだ。私に好意を抱いていた同級生と少しの興味で事に至るからバチが当たったのか。
「と、とりあえず早く帰って横になりたい」
今が夏休みで本当に良かったと思う。この痛みを抱えて授業を受けるなんて自殺行為だ。
それよりなにより、早く帰って眠らねばいけない。と、急く気持ちで近道を通ろうと、舗装されていない木々に囲まれた細道に足を踏み入れた。
この日
もし近道なんてしなくて、いつもと同じ道を通っていたら
私の夏休みはきっと、つまらない日々になっていたんだろうと思う。