愛しの殺人鬼
第1章 ひまわり畑
「んん、少し休もうかな」
この道を通ったのは失敗だったかもしれない。道が悪いせいで余計に体力が奪われてしまう。
だからと言って引き返す距離でもないし…と悩んで、私は少し休む事にした。木々に囲まれているから蒸すような暑さもなく、風が通って気持ちがいい。
「そういえば、向日葵今年も咲いたんだ」
木の根元に座ると、横目で黄色が視界に映った。それは昔よく見に来ていた向日葵畑で、誰の手入れもないのに毎年よく咲くため不気味がられていた。
私は好き、なんだけどな。
「…死ぬならこんな綺麗な場所がいいな。花粉症だけど」
すぅ、と鼻から息を吸うと、濁りのない澄んだ空気が身体中を満たす。そして目を瞑り、いつもは煩わしい蝉の声と葉が揺れる音に耳を澄ました。
「なら、ここで死ぬ?」
だから、澄んだここに似つかわしくない、物騒な言葉も鮮明に聞こえた。