愛しの殺人鬼
第1章 ひまわり畑
「は?」
人がいたことに驚いて目を開けるけれど誰もいなくて、木々の隙間に目を凝らす。
けれど、視界に映るのは自然だけで声の主はどこにもいない。
「無防備だね。学校で習わなかった?人気のない場所に一人で行ってはいけませんって」
そして、向日葵畑からキラリと何かが光ったと思った刹那
ヒュンッ
「、」
閃光のような何かが、私の真横を通り過ぎた。
ーーー恐る恐る、横目で確認してすぐにはっと息を飲んだ。
鈍色に光る鋭いナイフが、木にめり込んでいる。はらりと落ちた私の髪を巻き沿いにして。
「あ、頬切れちゃった?」
「え…?」
そう言われて、頬がピリッと痛み出し、生暖かい何かが頬を伝った。ーーー何、何が起こったの?
向日葵畑から突然ナイフが飛んできて……、
バクバクと心臓を高鳴らせ、呆然と向日葵畑を見つめる。
そこに、誰かがいる。
「誰ですか…」
震える唇で、やっとその言葉を紡ぐ。煩わしい蝉が耳鳴りのように頭の中で響いて、ズキズキと痛み出す。
そして、ガサリと向日葵が揺れた。
「誰でもないよ。通りすがりのお兄さんです」